御曹司は身代わり秘書を溺愛しています


「お前がっ……娘をそそのかしたんだろうっ。それに……身代わりの秘書だと!?もしや西条氏も結託して、私を騙していたんじゃ……」


なおも私に寄り添う怜人さまを前に、彼の行き所のない想いは怜人さまにまで及ぶ。

まだ何とかなるのではとあがく彼の姿は、醜悪というよりはむしろ哀れだった。


「怜人は関係ないですよ。我々だって被害者だ」


混乱した私たちの上に、淡々としたウィリアム氏の言葉が響いた。

その短い言葉の中に、私に対する意志がはっきりと感じ取れる。


——こんなスキャンダルが表に出たら、わが社にとっては相当なダメージだ——


夕べ、冷たく放たれた言葉が脳裏を過ぎった。

私が可憐さんじゃないと知りながらそばに置いてくれた怜人さま。けれどそれは、結果的に京極家やウィリアム氏を騙した共犯者だと言える。


最初怜人さまが私を可憐さんの身代わりにしてくれたのは、可憐さんのお腹の子供を守るためだ。

可憐さんの存在がなければ、私は怜人さまの思惑通りメール室で働いていたはずだった。

あの時点で京極家とのお見合いを断っていれば、こんなことに怜人さまや会社まで巻き込む事態には陥らなかった。


< 189 / 242 >

この作品をシェア

pagetop