御曹司は身代わり秘書を溺愛しています


約束の場所に六車さんが迎えに来てくれ、後部座席に乗り込むと、オフィスに置きっぱなしだったバッグとコートが置かれているのが目に入った。


「怜人さまを説得するのが大変でした。あなたの居場所を知らせろと言って聞かなくて」

「怜人さまとお父様とは……大丈夫ですか?」


昨夜からの様子から、ふたりの関係が悪化しているのではととても心配だ。


「ええ……。そのことも含めて、ウィリアムさまからお話があると思います」


運転席の六車さんが、思いやりのある優しい声で私に言った。


「理咲さん、怜人さまのお母様が幼いころに亡くなったことはご存知ですか」

「はい。以前、怜人さまが話してくださって」

「とても優しく穏やかで、でも時には想像もできないほどの強さでウィリアムさまや怜人さまを守ってみせる、そんな素晴らしい女性でした」


卵焼きとタコさんウィンナーのお弁当。そんな優しいイメージが脳裏に浮かび、会ったことのないその人に、親しみと愛しさを感じる。

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