御曹司は身代わり秘書を溺愛しています
「彼女が亡くなったとき、ウィリアムさまは本国にいらっしゃいました。幼い怜人さまと病床に伏した奥様を日本に残し、大企業の跡取りとしての業務に忙殺されることを余儀なくされておいででした。しかも、ご両親に反対されての日本人との結婚に、当時の貴族社会では、四面楚歌の状態だったと聞いています」
「そんな……」
「ウィリアムさまは、きちんと周囲を整えてから本国に奥さまを迎えたかったのだと思いますが、結果的にご夫婦で過ごす時間が少なくなってしまった。口には出さなくても、そのことを怜人さまはずっと恨んでおいででした。怜人さまは表面上は誰にでも優しく接する方ですが、本当の心は誰にも明かさず、ただ仕事だけに没頭していた。華やかな容姿でどこにいても女性に人気のある方ですが、気まぐれなおつきあいをすることはあっても、誰かを愛することなど決してなかった。そばで見ていて、いつもいたわしいと思っていました」
彼をずっとそばで支え続けた六車さんの、怜人さまに対する深い想いが伝わってくる。
と同時に、怜人さまが抱えてきた孤独の深さを思い知らされて、胸が苦しくなった。