御曹司は身代わり秘書を溺愛しています

そう言うと、強引に唇を奪われる。息を継がせないほどの激しいキスに、自然に体が応えていた。

まるで磁石が引き合うように、触れていることが当たり前のように互いを求め合う。

やがてようやく唇が離れた時には、ふたりとも息が上がっていた。


「怜人……。お父様のことを、あなたは誤解しています」

「誤解もなにも……彼とはもう何年もろくに話したことはありません。僕と母を日本に置き去りにして、地位や名誉を守り続けてきた人ですからね」

「だから、それは違うの……。お父様はあなたとお母様のことを、本当に愛していらしたんです」


怜人のきれいな瞳が訝しげに細められた。私はその美しい頬に手を添える。

顔の輪郭をゆっくり滑り、唇に指で触れる。何一つ忘れないように。


「お父様はあなたと私が自分たちのようになるのを恐れています。自分が経験した苦しみを、あなたに味あわせたくない。それに私ややがて生まれる子供を、あなたとお母様のように不幸にしたくない。本当は、私たちを思いやってくださる、とても優しい方なんだと思います。何より、今でもあなたのお母様を愛してる」


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