御曹司は身代わり秘書を溺愛しています

そう言った私に、怜人さまの表情が歪み、顔をそむけた。


「そんなの……嘘だ。だって父は、僕と病気の母を何年も放っておいて……」

「一日も早く本国に呼び寄せようと、周囲の方々の理解を深めていたのだそうです。そのためには自分がしっかり事業を成功させなければと、がむしゃらに働いていたと。それは六車さんからも聞きました。お父様はとても不器用な、でも誠実な方なのだと思います。何よりも今回のことでそう思います。とても冷酷に見せかけておきながら、結果的には可憐さん親子の仲とお腹の赤ちゃんのことまで丸く収めて……真の優しさがなければ、きっとそこまでできないでしょう?」

「だけど……あなたのことを傷つけた」

「私は傷ついてなんていません。怜人さまと可憐さんの赤ちゃんを助けられた。それこそが私の望むこと。あなたと可憐さんを守れて、私は幸せです」

「理咲……」


怜人の腕がまた私の体を抱く。息ができないほど強く抱きしめられ、もうこのままここで死んでしまってもいいと思うほどの幸せを感じる。

けれど、ずっとこのままでいるわけにはいかない。彼には彼の世界で、やるべきことがあるのだ。

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