御曹司は身代わり秘書を溺愛しています
言いかけたところで、レイチェルが近づいてきた。
相変わらずの美しい笑顔を私に向け、『お久しぶりね』と挨拶をされる。
なんとかこちらも挨拶を返すと、『フィル、私これで失礼するわ』と言い残し、その場を立ち去った。
残された私たちは、気まずい雰囲気のままその場に立ち尽くす。
やがて、怜人が怖い顔のまま言った。
「この一年、僕はあなたに会えないのを我慢して、こんなに頑張ってきたのに、あの男にやすやすと体を触らせるなんて、いったいどういうつもりなんですか」
「体を触らせてなんか……」
「触らせていたでしょう。彼はあなたの肩を抱いていましたよ」
「だって、怜人がレイチェルと抱き合っていたから……」
怜人の首に絡まったレイチェルの赤い爪。思い出しただけで胸がざわざわする。
沸き起こってくる黒々とした気持ちに負けてしまいそうで、私は唇を噛んだ。
「抱き合ってなどいません。……ちゃんと教えたでしょう。あれは挨拶です。確かに彼女の場合は、いつも少し親密すぎますけど」