御曹司は身代わり秘書を溺愛しています


言いかけたところで、レイチェルが近づいてきた。

相変わらずの美しい笑顔を私に向け、『お久しぶりね』と挨拶をされる。

なんとかこちらも挨拶を返すと、『フィル、私これで失礼するわ』と言い残し、その場を立ち去った。

残された私たちは、気まずい雰囲気のままその場に立ち尽くす。

やがて、怜人が怖い顔のまま言った。


「この一年、僕はあなたに会えないのを我慢して、こんなに頑張ってきたのに、あの男にやすやすと体を触らせるなんて、いったいどういうつもりなんですか」


「体を触らせてなんか……」


「触らせていたでしょう。彼はあなたの肩を抱いていましたよ」


「だって、怜人がレイチェルと抱き合っていたから……」


怜人の首に絡まったレイチェルの赤い爪。思い出しただけで胸がざわざわする。

沸き起こってくる黒々とした気持ちに負けてしまいそうで、私は唇を噛んだ。


「抱き合ってなどいません。……ちゃんと教えたでしょう。あれは挨拶です。確かに彼女の場合は、いつも少し親密すぎますけど」


< 218 / 242 >

この作品をシェア

pagetop