御曹司は身代わり秘書を溺愛しています

怜人は自分を落ち着かせるように短い息を吐き、さらりとした金色の髪をかき上げた。

明らかに不愉快そうに歪められた端正な顔を見て、胸が刺されるように痛む。


……怒ったの?


一年ぶりにずっと会いたかった怜人と会えたというのに、どうしてこんなことになってしまったんだろう。

あまりのショックに何も言葉が見つからない。

ただ黙って立ちすくんでいると、僅かな沈黙のあと、強く腕を引かれ胸の中に閉じ込められた。

そして怜人に、ぎゅっと抱きしめれられる。

ざわざわしていた胸の内がすぅっと澄んで、尖っていた気持ちが丸く柔らかくなっていくのを感じる。


十二月のホテルのロビーには、いつもより多くの人であふれている。

目の前を通り過ぎた二人連れの女性が一瞬目を丸くしたけれど、鼻腔をかすめる懐かしい怜人の香りに、そんなことはすぐに気にならなくなった。


「理咲には、また一から教えなくてはいけませんね。これはやりすぎの部類。……というか、これは挨拶じゃありませんけど」


そう言いながら怜人は私の唇に軽くキスを落とすと、ソファに座らせ、フロントで手早く手続きを済ませる。


「一緒に来てください」


そう短く言われ、肩を抱かれたままエレベーターに乗った。

……どこにいくの?


怜人の切羽詰まった表情に、行き先を聞くことも躊躇われる。

エレベーターが停まり、彼に連れられて降りるとそのまま客室の廊下を進んだ。

そして突き当りの部屋に辿り着くと、怜人に手を引かれ、お互い一言も発しないまま部屋に入った。

その途端、彼に荒々しく唇を塞がれる。

きっと強引すぎる行為なのに……私も夢中で彼に応えてしまう。




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