御曹司は身代わり秘書を溺愛しています
「ラファエル……。これは理咲。僕の大切な人だ。君は彼女の馬じゃないけど、今日は僕と一緒に乗せてくれる?」
そう言いながら彼は私に目配せし、「なでてあげて」と手を引き寄せる。
馬に触るなんて、生まれて始めてのこと。けれど利口な瞳で私を見つめるラファエルに、恐怖心は全く感じない。
首にそっと手を触れると、彼は何かを探るようにじっと私を見つめている。
「初めまして。よろしくね」
すべすべした毛並みを何度もなでると、「ブルル……」と気持ちよさそうに鼻を鳴らし、顔を私にこすりつけてくる。
こんなに大きくて威厳のある生き物なのに……すごく可愛い。
「良かった、理咲が気に入ったみたいだ。……じゃあ、おいで」
お世話係らしい人に鞍をつけられたラファエルが厩舎から出てくると、先にひらりと背中に乗った怜人に手を差し伸べられる。
おずおずと手を差し伸べると、強い力で引き上げられ、あたふたと怜人の前に跨った。
後ろからたずなを持たれ、ぎゅっと抱きかかえられるように密着する。
戸惑う暇もなく、怜人はラファエルを駆った。
馬に乗るのがこんなに爽快だなんて、知らなかった。
冬の枯木立の中を駆けていくのは、まるで空を飛んでいるような気分で、振動は感じるものの恐怖感は全く感じない。
なにより背後から私を守るように抱く怜人を感じて……。それだけで胸がキュンとなる。