御曹司は身代わり秘書を溺愛しています
どれくらい走っただろう。周囲を冬の木々に囲まれたなだらかな勾配を走り抜けると、不意に視界が開けた。
少し小高い丘からは、果てしなく広がる田園風景が見渡せる。
怜人が丸く広がった平らな場所でたずなを引くと、ラファエルがその大きな体をぴたりと止めた。
「理咲、大丈夫でしたか」
「はい。すごく気持ちいいです。それに、とってもきれいな場所ですね」
そう言いながら遥かな大地を見渡すと、背後の怜人が少し安心したのが分かった。
「この土地は代々僕らが受けついできた土地。大部分は今は農家の方々のものですが、この辺りの産業や農業を守る義務が、僕にはあります。だからこそ事業を維持して拡大する必要がある」
はっとして振り返ると、優しいけれど真剣な表情の視線とぶつかる。
「あなたと離れていた一年間、僕は必死で事業に取り組んできました。同時に、ここへ帰ってくる機会も多くなった。そして自分の生まれた環境と責任について、改めて深く知ることになりました。僕にはここを守る義務がある。理咲、僕と一緒に生きるなら、否応なしにあなたにもその責任がかかってきます」
そう言った怜人の、強い瞳が私を捉えた。優しいけれど、優しいだけじゃない。
怜人は、私の愛する人はそんな人だ。
彼のことを想うだけで、私の心は意味もなく震える。
「僕はもうあなたを離せない。だけど、あなたを縛ることともまたできない。……だから選んでください。僕と一緒に生きることを」