御曹司は身代わり秘書を溺愛しています
振り返った顔の顎を捉えられ、唇が近づいて——。
触れるか触れないかの距離で見つめられる。
「……選んで。僕と生きると」
甘く掠れた声。少し乱れた前髪からのぞく瞳が煌めいて——。
思わずクスリと笑みを漏らすと、心外だと言わんばかりの怜人が、真剣な口調で抗議する。
「僕はこんなに真剣なのに、いったい何がおかしいんですか」
「だって……。こんなの、イエスと言うしかないじゃないですか」
「嫌だというんですか、あなたは」
そんなわけない……そう笑って答えようとした唇が、彼の吐息で塞がれる。
乗馬用グローブを付けたままの怜人の手で頬を包まれ、自由を奪われたままの口づけが続いて——。
「イエスと言って下さい」
少し強引なキスですっかり息を乱してしまった私を引き寄せたまま、甘く掠れたテノールが耳元でささやいた。
とても真剣な瞳の私の暴君に、これ以上はふざけられないと悟る。
「もうずっと前から、私の人生にはあなたと一緒の未来しかありません」
しっかり目を見て答えると、ようやく表情を緩ませた怜人がまた私にキスをする。
ラファエルに乗ったままの、あまりにも終わりのないキス。
彼と触れ合っていたいのは私もおなじだけれど、ラファエルに乗ったまま止まらない怜人に、少し慌ててしまう。
「怜人……。ラファエルがびっくりしてます……」
「大丈夫。こいつも男だから、僕の気持ちは察してくれています」
笑いながら、彼はキスを止めようとしない。そんな私たちを、ラファエルは微動だにせず待っていてくれる。