御曹司は身代わり秘書を溺愛しています
「今はこんなに殺風景ですけど、春から夏にかけてはとても美しい土地なんです。……そうだな、あなたが僕の花嫁になるころには、きっと緑が芽吹き花が咲き乱れているでしょう」
ようやく唇を離した怜人が、後ろから私を抱いたまま言った。
「それじゃ、今度はお弁当を持ってピクニックに来ましょう。私、怜人に作りたいお弁当があるんです」
そう言うと、背後で嬉しそうな笑い声が聞こえる。
卵焼きとタコさんウィンナーのお弁当。それ以外にも、彼の好きなものをたくさんバスケットに詰めて持って来よう。
怜人のお父様や私の家族、それに六車さんやレイチェルや……私たちを見守ってくれている人たちみんなで一緒に。
そう思い浮かべた私の考えは、きっと今怜人が考えていることと同じ。
さすがに退屈なのか、ラファエルがブルル……と何かを訴えるように鼻を鳴らしている。
「楽しみだな。……本当は今すぐ結婚したいけど、それじゃそれまで我慢します。だけど……早くふたりきりになって、あなたにかかりきりになりたい。それはもう我慢できそうにないな」
そう熱っぽくつぶやくと、怜人は姿勢を正してたずなを引く。
私たちを乗せた白い馬は、また木立の中を駆け抜けていった。