御曹司は身代わり秘書を溺愛しています
中井ベーカリー閉店から一週間ほどが経った。
私は真弓さんに教えられた住所を頼りに、きょろきょろと目的の場所を探していた。
「えっと……この辺りのはず……」
真新しい高層ビルが並ぶこの辺りは、都内でも有名なオフィス街。
今日は、ベーカリーの常連さんの親戚のお友達が紹介してくれたという、仕事の面接日だ。
何でも『メール室』という部署の仕事らしい。
会社宛に送られてきた郵便物を一旦そこに集め、各部門に振り分けるという。
中々仕事が見つからないでいる私を心配してか、ご主人の実家に戻った真弓さんが連絡してくれ、今日、ようやく面接にこぎつけたというわけだ。
何とか目的地にたどりつき、受付で用件と名前を伝える。
隙のない美しい笑顔で「少々お待ちくださいませ」と言われ、ちらりと意味ありげな視線を向けられた。
頭の先からつま先まで吟味されているような気分になり、緊張で心臓が音をたてる。
私が今日面接を受ける『Teddy 's Company』は英国系の有名企業だ。
本国では有名ショッピングセンターを始め、ホテルや遊園地など多岐に渡って事業を展開している大企業だけれど、こちらの日本支社では、主にホテルや英国系有名ブランドの販売などを行っていると聞いている。
そんなに大きくはないけれど、自社ビルらしきオフィスは洗練されていて、ロビーを行きかう人の中には外国人の姿も見受けられる。
しばらくベーカリーで身を粉にして働いていた私にとっては、久しぶりの垢抜けた世界だ。