御曹司は身代わり秘書を溺愛しています
「あ、そういえばあなたは?」
「私はこれから、ここのメール室の求人の面接なんです」
「ふぅん、仕事、探してるんだ。世間知らずなお嬢さん風なのにね。……あれ、なんかワケあり?」
鋭い指摘に一瞬怯んだ私を、可憐さんが意味ありげに見つめる。
「はい。色々事情がありまして……。だからこのお仕事、絶対採用されたいんです」
チラリと腕時計に目をやると、もう約束の十分前に迫っている。
約束の時間に遅れて印象が悪くなってはいけない。そろそろ向かった方がいいだろう。
「本当におめでとうございます。お体、大切にしてくださいね」
そう笑顔でいって立ち去ろうとした私の腕を、可憐さんの手がぐっとつかんだ。
そのあまりの力強さに、一瞬体がこわばる。
「あの……?」
「あなた、名前なんて言うの?」
「理咲……葉山理咲と申します」
「ふぅん、じゃあさ、歳は?」
可憐さんの眼差しが鋭さを増し、なんだか怖くなってさりげなく距離を取る。
「あの、私そろそろ面接に行かないと……」
「単刀直入に聞くけど、あなたお金欲しくない?」
「えっ……」
可憐さんのぶしつけな質問に、思わず強い視線を返すと「あっ、ゴメン」と素直に謝られた。
「失礼な言い方してゴメン……。私、今かなりテンパっててさ」
可憐さんは大事そうに握っていた妊娠検査薬を丁寧に箱にしまうと、神妙な顔つきできり出した。