御曹司は身代わり秘書を溺愛しています
会議の終わる時間が近づき、私は席をたつと、秘書エリアの給茶スペースへと向かった。
そして作業台の隅に置かれた紙袋にそっと近づく。
今朝、いつもより早く目が覚めてしまった。
昨夜怜人さまと過ごした時間があまりにも幸せで、だからなおさら怜人さまが話してくれた特別な『和食』のことがずっと頭から消えなかった。
怜人さまのお母様が作ったお弁当は、きっと今の彼の生活では、決して口にするはずのないメニューだ。
だから……つい作ってしまったのだ。
朝冷蔵庫を開けると、申し合わせたように材料がそろっていた。
ウィンナーは着色料がある赤いものではなかったが、細工を施せば見事にタコの形になったし、卵焼きは母直伝のだし巻卵を、いつもより少し甘い味付けで作った。
研究に没頭すると食事が疎かになる父のため、毎日お弁当を作っていた母の影響で、高校生の頃から自分のお弁当は自分で作るようになっていたから、卵焼きは私の得意料理だ。
おにぎりはシンプルな塩にぎりと、焼いた塩鮭。お米だけはお母さんが送ってくれる魚沼産コシヒカリだから、きっとおいしいと思う。
私がいつも使っているお弁当箱と、うちにあったかわいいイチゴ柄のお弁当箱に詰めてでき上がった二つのお弁当は、お母さんが刺繍して作ってくれたナプキンに包まれて、紙袋のなかに仲良く並んでいる。