御曹司は身代わり秘書を溺愛しています

本当のことを言うと、勢いで作ったものの、これを怜人さまに食べてもらう勇気は私にはなかった。

だから、今朝あんなふうに言われるまでは、このまま家に持ち帰るつもりでいたのだ。

けれどあんなふうに言われて、私は迷っていた。


『ひとりなら、別にたべなくたっていい』


さっき無造作に言った言葉がよみがえる。

いつも穏やかなのに、怜人さまは時々驚くほど乾いた言葉を放つ。それも、まるで投げつけるみたいに。

自分では気づいていないのかもしれないけれど、その乾いた部分が、怜人さまの大切な思い出であるこのお弁当で少しでも癒せる可能性があるなら、例えこんなものと笑われてしまっても別にいい。


私はちらりと腕時計に視線を落としながら、ふたつのお弁当が入った紙袋を手に取った。




ちょうどランチタイムに差し掛かるころ、怜人さまたちが部屋に戻ってきた。

六車さんと軽く打ち合わせをした後、怜人さまは上着を受け取ろうとした私に、にこにこしながら近寄ってくる。


「今日はどこかへ出かけますか?それとも、何かをテイクアウトしましょうか?僕も一緒に買い物に出かけてもいいですね。ふたりで別々のものを買って、分け合ってもいいし」


子供のように嬉しそうな顔で私を覗き込むから、それだけで心臓が止まりそうになる。


「あの、怜人さま……」


思い切ってお弁当のことを話そうとしたとき、不意にデスクの内線が鳴り響き、近くにいた怜人さまが受話器を取った。

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