御曹司は身代わり秘書を溺愛しています
「……。分かりました。通してください」
短い受け答えののち受話器を置くと、怜人さまは肩をすくめて苦笑する。
「アポなしの来客は、通常お断りするんですが……」
しばらくしてクラウディアが部屋に案内してきたのは、ハリーの妹、レイチェルだった。
『フィル!!会いたかったわ!!』
レイチェルは私など眼中にないよう怜人さまに近づくと、首筋に抱きつき、頬にキスをする。
私が教えてもらった節度をもった挨拶ではなく、きっと『やりすぎ』の部類だ。
『あなたったら何度連絡しても忙しい、の一点張りでしょう?来週には帰国するから、実力行使で押しかけてきちゃった』
『本当に、君は強引だな』
『あら……。迷惑だった?』
チラリと私を一瞥しながら、レイチェルはなおも怜人さまに腕を絡ませたままだ。
『ねぇ、ランチはまだでしょ?これから付き合って。いいお店を見つけたのよ』
『これから?僕は理咲と……』
絡み付いていたレイチェルの腕を外すと、怜人さまが推し量るような視線を私に向ける。
「理咲、レイチェルが一緒でもかまわないですか」
そう日本語で聞いてくれた私に対する配慮に、胸がキュンとする。
「怜人さま、あの……。実は私、お弁当を持ってきていて。それに、せっかく来て下さったレイチェルさんにも失礼ですし、今日はおふたりでお出かけください」