御曹司は身代わり秘書を溺愛しています

「理咲さん、実は私もお昼にあぶれましてね。これから何か買ってこようと思っていたところだったんです。もしもよろしければ、これ、いただけませんか」


しどろもどろになって言い訳する私に、六車さんが悪戯っぽく言った。優しさに満ちた眼差しに、心がホッと温かくなる。


「あの、ぜひどうぞ。おいしくないかもしれないですけど……」


「きっと心を込めて作ったものでしょうから、おいしくないはずありませんよ」


そう言って、六車さんはイチゴ柄のお弁当箱を持って出て行った。


午後の外出ぎりぎりの時間に戻った怜人さまは、私と言葉を交わす暇もなく外出してしまった。そしてようやく戻ってきたのは、もう定時も差し迫った頃だ。


いつものように香りのよい紅茶を入れてデスクに置くと、少し疲れた表情の怜人さまから上着を預かる。


「……お疲れになりました?」

「いいえ。……いや、少し。今日はホテルスタッフから幾つか問題点を提示されて、改善のためのディスカッションが思いのほか白熱したので、僕も神経を使いました」

「それは……お疲れ様でした。何か甘いものでもお持ちしましょうか?」

「いや、それよりあなたがもう少しここにいてくれたら、それでいい。今日は何か予定は?」

「特にありません。強いて言うなら、お風呂屋さんの開いている時間までに帰りたいですけど」


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