御曹司は身代わり秘書を溺愛しています


「理咲さん、ご馳走様でした。本当においしかった。お弁当箱は洗ったつもりなのですが、うまく洗えていなかったらすみません」


わざわざお弁当箱を洗ってきてくれた六車さんに恐縮して、歩み寄ってお弁当箱を受け取る。


「本当においしかったですよ。田川さんが少し欲しいというので、おかずを交換しました。卵焼き、味付けが絶妙だと大変褒めていました。明日、レシピを教えてほしいそうです」

「そうですか。良かったです」

「それに……。タコの形のウィンナーを食べたのは、息子たちがまだ小さな頃以来です。とても上手にできていましたし、あのハチマキは海苔ですか?それに、胡麻で目までつけて……。いやはや、理咲さんは芸術的センスまでお持ちだ」

「大げさですよ、六車さん」


そう言いながら、お弁当のメニューがひとつずつ発表されてしまっていることに気づき、動揺する。

これでは、昨日聞いた怜人さまの好きな『和食』のメニューそのままではないか。

もうこれ以上はダメだと私は話を逸らす。


「あの、六車さん、私の健康保険のことですけど」


「あぁ、あれは人事に確認して、三か月更新の契約社員と同じ扱いになってるから大丈夫だと、今朝お伝えしたばかりでは?」


私の必死の抵抗も、六車さんはどこ吹く風だ。


「それに、何より素晴らしかったのはおにぎりですね。ご飯がおいしかったのでそれを引き立てる塩むすび、最高でした。あ、鮭ももちろんおいしかったですよ」

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