強引専務の身代わりフィアンセ
「さっき、ローランド氏に言われたとき、美和があんなふうに返すとは思ってなかったから、少し驚いた」

「す、すみません」

 謝罪の言葉を口にすると、彼は回していた腕の力を緩め、私の頬に手を添えながら顔を寄せてきた。互いの息遣いがわかりそうなほどの距離で、彼はおもむろに口を開く。

「嬉しかったよ……仕事だから、だとしても」

 そう言った彼の顔があまりにも切なくて、勝手に胸が締めつけられる。だから私は、あれこれ考える間もなく叫んでいた。

「そんなのじゃありません!」

 突然の大声に彼は虚を衝かれたような表情になった。私は自分の立場を忘れて、思い切って本音を告げる。

「私、本当にIm.Merのアクセサリーが好きなんです。MILDに勤める前から知っていて。だから……個人的にはティエルナや、ほかのアクセサリーブランドよりIm.Merの方が好きです」

『……美和はIm.Merよりティエルナの方が好きなんだろ?』

 さっきの一樹さんの発言を否定したいのもあって私は必死だった。本当は、会社の歓迎会で彼と初めて会話したときに言いたかったことだけれど。あまりにも今更過ぎる気がして、私は小さく付け足した。

「その、信じてもらえませんかもしれないですけど」

 伏し目がちに言うと、彼の手が優しく私の頭を撫でてくれる。だから私はそっと彼の方を見た。

「信じるよ、美和のことは」

 目を合わせて言ってくれる彼の顔が、あまりにも柔らかくて、なんだか泣きそうになる。もっと見ていたい気がしたけれど、それは再度彼にきつく抱きしめられたことで阻まれてしまった。

 そして次の瞬間、私は声にならない悲鳴をあげた。首筋に生温かい感触を感じたからだ。
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