強引専務の身代わりフィアンセ
「な、なに、なに、するんですっ!?」

 震える声で抗議するも、一樹さんは私の首元に顔を埋めたままだった。そのままの体勢で返答がある。

「美和があまりにも、無防備に肌を晒しているから」

「これは、そういう服じゃないですか!」

 違う、そういう問題でもなくて! しれっと言ってのける彼に対し、私はパニックを起こしそうだった。そうしている間にも、薄い皮膚にわざとらしく唇を寄せられ私は体をすくめる。

「っや」

 上擦った声が漏れてしまい、恥ずかしさで、そのまま体を硬直させた。しばらくして彼が笑いを噛み殺しながら、ゆるゆると顔を上げる。

 そして、彼は回していた両腕を力なく私の肩に置いて、こちらの顔を覗き込んできた。その顔は実に楽しそうで、余裕たっぷりだ。

「このまま襲われたくなかったら、さっさと先にシャワーを浴びて着替えてくるんだな」

 口角を上げたまま告げられ、私は悟った。どうやら私を先にバスルームに送り込ませるために、こんなことをしたらしい。だからって、やり方があると思うんだけど。

「っ、一樹さん、酔ってます?」

 なんだか悔しくなって私は恨めしげに彼に尋ねた。そんなに飲んでなかったし、お酒にも強いイメージだったけれど。

「酔ってる」

「自分で言うって酔ってないか、よっぽどってことですよ」

 あまりの即答ぶりに私はため息をついた。

「酔ってたら許してくれるのか?」

 なにを?と聞き返すのは憚れて私は彼から視線を逸らした。
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