強引専務の身代わりフィアンセ
夏のジュエリーイベントを目前に控えたある日、ティエルナが、サクラを雇って自分のブースに人を寄越しているという話を聞いた。
こちらに迷惑がかからないなら、他社がなにしようと興味はない。一蹴する俺に対し、情報を告げた幹弥は、笑みをたたえたままだった。
『本命はここから。一樹くんが、ずっと気になっている彼女のことだよ』
キーボードを打つ手を思わず止める。誰のことか、なんて尋ね返すまでもない。幹弥はどこかの探偵かのように、美和の経歴や実家のことなどを説明してきた。
前回のジュエリーイベントに彼女がやってきていたことも、その理由も。
『よかったじゃん、一樹くん。向こうはプロだったんだよ。べつに心底ライバル社の商品に惚れ込んでいるわけでもないんだし、変に気落ちしなくてもいいんだって』
幹弥のフォローが耳を通り過ぎていく。彼女の笑顔を見て、ティエルナに負けた気がしていたのも本当で、けれどすべて金で雇ってのことだったなら、幹弥の言う通り、なにも気にすることはない。
けれど、ずっと忘れられなかった彼女のあの幸せそうな表情は、作り物だったという事実に、安心よりも落胆の気持ちが先にくるなんて。
複雑な思いを抱きながら、イベントに参加することになった。今回はステージで新作の説明をしなくてもいい代わりに、ほかの用事や挨拶に忙しく、なかなか会場に顔を出すことが叶わなかった。
会えないかもしれない、けれど会えない方がいいのかもしれない。妙な葛藤に苛まれながら、俺は会場で彼女を見つけることができた。
ステージイベントが始まるとのアナウンスに会場がざわついた一瞬、彼女と目が合う。すぐさまこちらに背を向ける彼女を、俺は気がつけば必死で追いかけた。
今このチャンスを逃すと、もう二度と彼女を捕まえることができない、そんな気がして。
こちらに迷惑がかからないなら、他社がなにしようと興味はない。一蹴する俺に対し、情報を告げた幹弥は、笑みをたたえたままだった。
『本命はここから。一樹くんが、ずっと気になっている彼女のことだよ』
キーボードを打つ手を思わず止める。誰のことか、なんて尋ね返すまでもない。幹弥はどこかの探偵かのように、美和の経歴や実家のことなどを説明してきた。
前回のジュエリーイベントに彼女がやってきていたことも、その理由も。
『よかったじゃん、一樹くん。向こうはプロだったんだよ。べつに心底ライバル社の商品に惚れ込んでいるわけでもないんだし、変に気落ちしなくてもいいんだって』
幹弥のフォローが耳を通り過ぎていく。彼女の笑顔を見て、ティエルナに負けた気がしていたのも本当で、けれどすべて金で雇ってのことだったなら、幹弥の言う通り、なにも気にすることはない。
けれど、ずっと忘れられなかった彼女のあの幸せそうな表情は、作り物だったという事実に、安心よりも落胆の気持ちが先にくるなんて。
複雑な思いを抱きながら、イベントに参加することになった。今回はステージで新作の説明をしなくてもいい代わりに、ほかの用事や挨拶に忙しく、なかなか会場に顔を出すことが叶わなかった。
会えないかもしれない、けれど会えない方がいいのかもしれない。妙な葛藤に苛まれながら、俺は会場で彼女を見つけることができた。
ステージイベントが始まるとのアナウンスに会場がざわついた一瞬、彼女と目が合う。すぐさまこちらに背を向ける彼女を、俺は気がつけば必死で追いかけた。
今このチャンスを逃すと、もう二度と彼女を捕まえることができない、そんな気がして。