強引専務の身代わりフィアンセ
 追い詰めるような形で彼女を問いただした。不躾なのは十分に承知していたが、こちらにも余裕はなかった。演技なら演技でいい。

 彼女の口から真実を告げてもらえれば、きっと、こんなふうに彼女のことで心乱されることもなくなる。そう思っていたのに。

『どうぞ。契約を切るなら切ってください』

 彼女は最後まで自分とティエルナの関係を告げなかった。今の仕事を失うかもしれないという状況になっても、ティエルナのアクセサリーを身に纏った彼女はまっすぐに俺そ見つめてきた。意志の強い色を瞳に宿して。

 また、俺の中で彼女の忘れられない表情が増えただけ。なにも解決なんてしない。

 イベントから帰ってきて、興味津々に電話を寄越してきた幹弥に俺は嫌々今日の顛末を話した。すると、返ってきたのは思った以上に呆れた声だった。

『一樹くんはさー、つまりなにがしたいわけ?』

『それがわからないから苦労してるんだ』

『よく言うよ。たいした苦労もしてないくせに』

『してるだろ。なんでここまで、ひとりの人間に振り回されないとならないんだ』

 無意識に頭を掻く。すると電話の向こうで、幹弥はしばし考える素振りを見せた。

『ならさ、同じように笑ってもらえば? ティエルナと同じようにお金払って』

『Im.Merにサクラはいらない』

きっぱり言い捨てると、幹弥は負けじと早口で続けてきた。
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