強引専務の身代わりフィアンセ
 そしてエキスポ当日、彼女を迎えにいって、俺は目を見張った。長くて緩やかに巻いていた髪は肩でまっすぐに切りそろえられ、髪の色もこの前会ったときとは違う。

 どうしてか、なんて尋ねる間でもない。美弥を意識したものだとすぐに悟った。

 申し訳ないような、腹立たしいような。仕事だから、と躊躇いなくそこまでしてしまえる彼女がどこか憎らしかった。俺のためなのもわかっている。けれど、それは俺が依頼者だからだ。

 婚約者の依頼をしたときも、彼女はさほど驚いてはいなかった。彼女は俺じゃなくても、きっと依頼者のためにはここまでするに違いない。

 その事実が消えず、ついに俺は自分の中でくすぶっていた苛立ちを、お門違いだとわかっていながら、彼女に向けてしまった。

 挑発めいた八つ当たりを口にして、すぐに後悔する。彼女の傷ついた、という顔を見て、そんな表情を自分がさせたことに胸が軋んだ。

 さっさとリビングをあとにした彼女に俺はなにも言えず、とんでもない自己嫌悪に見舞われることになった。

 笑ってもらうどころか、彼女を傷つけて、無理をさせている。俺はなにをしたいんだ。

 頭を冷やそうとシャワーを浴びて、自問自答を繰り広げているところで電話が鳴った。いつもなら無視するところだが、今は誰かに話を聞いて欲しかったのもある。
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