強引専務の身代わりフィアンセ
『音をあげるの早すぎじゃない? わかってないなぁ、一樹くんは。俺はべつに片思いを楽しんでるわけじゃないよ。全部を手に入れるためには、ちょっと手がかかる相手だっただけで。でも最後は奪ってでも物にする』

『たいした自信だな』

『あれ? 一樹くんは、欲しいものを前にして指をくわえて見てるタイプ? 俺は冗談じゃないね、欲しいものは自分で手に入れる。多少やり方が強引でもね』

『俺は』

 そこで美和に声をかけられ、会話は終了した。俺は幹弥になんて答えるつもりだったのか。奪ってでも手に入れたい気持ちは理解できる。だが――。

 俺は今、隣にいる彼女に目をやった。今日の彼女の髪は、俺が言ったからかどうかはわからないが、緩やかに巻かれていて、花柄のワンピースによく似合っている。

 そっと、その髪先に触れると彼女はこちらに顔を向けてきた。

『私もすっかり奪われちゃいました』

「奪われたのは俺の方だけどな」

 彼女の目が大きく見開かれたところで、その額に軽く口づける。外だということもあり、顔を赤らめながら、美和は大袈裟に狼狽えた。

 けれどややあって照れつつも笑ってくれる。その幸せそうな表情に、俺もつられて微笑んだ。奪われたのは、捕まったのは、きっとこちらが先だ。

 この表情を見たときから、ずっと自分のものにしたかった。それは今だけじゃない、この先も永遠にだ。


ich bin ganz weg von Dir schon Im.Mer! ――君にとっくに心奪われているよ!
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