強引専務の身代わりフィアンセ
「にしても、少し俺のことを信用しすぎじゃないか」

 泊まりと言ったのはそっちのくせに!とつい反発しそうになったが、ここは冷静に返すことにする。

「専務のことを信用したから、なんて理由じゃありません。私と下手にトラブルになって途中で投げ出されたら困るのはそっちでしょ? ここまでしておきながら、一時の感情で動いて、そんな馬鹿な真似するような人じゃないと判断しただけです」

「……それは、褒め言葉として受け取っていいのか?」

 なんだか、前にもこんなことを聞かれた気がする。けれど、あのときとは違って、私はむくれたまま言い放った。

「お好きにどうぞ」

 本当なら顔を背けたいところなのに、今はそれもできない。ややあって専務はなぜか、肩を震わせて、笑いを堪える素振りを見せた。

「な、なんで笑います?」

 それを確かめたくて専務の方を見ると、その顔は随分と優しくて、なんだか可愛いとさえ思ってしまった。目が離せずにいると、専務の口からあまりにも意外な言葉が飛び出した。

「美和が、あまりにも可愛いから」

「……はいっ!?」

 思わず目を剥いて声をあげた。可愛いと思ったのは私で、それは専務のことなのに。混乱している間にも専務は、やっぱり口元に笑みをたたえたままだった。

「美弥さんがいるのに、そんなこと言っちゃ駄目ですよ」

「べつに、今は美和が婚約者なんだろ」

「ちょ」

 私の切り返しを専務はものともせず、長い指で私の前髪を掻き上げると、唇を寄せてきた。柔らかい唇の感触に心臓が止まりそうになる。
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