双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
「あの子たちの父親を、俺と認めたくなかったのはわかるけど……それとこれとは別の次元の問題……」

「そ、それは違うわ」

反射的に、葵は声をあげて彼の言葉を遮った。あまりにも悲しい誤解だったからだ。

晃介を父親と認めたくなかったなんてそんなことはありえない、むしろその逆だった。

彼の子だからこそ、葵はどうしても産みたいと思ったのだ。

本当のところ母ははじめ出産に反対した。経済的に安定していない状態で子供を育てることがどれだけ大変なことなのかよくわかっているからだ。

もちろん今は応援してくれているけれど、いつも心配そうにしている。

葵だって不安な気持ちはあるけれど、それでも頑張れるのは、双子への愛情と彼との幸せだった日々の思い出に支えられているからだと思う。

もう二度と会えなくても彼を愛し愛されたという事実が葵を動かしている。

「晃介、そうじゃない、そうじゃないの……」

頭を振ると、目尻から涙が散った。

合意書の文言が頭をかすめるけれど、それでもこれは伝えなくてはいけないと強く思う。そんな悲しい誤解をされたままは嫌だった。

突然泣きだした葵を、晃介が眉を寄せて見つめている。

困惑した表情で、葵の言葉を待っている。

「言えなかったのは、そういう理由じゃないの。晃介を父親だと認めたくなかったわけじゃなくて……」

でもその先は言えなかった。

本当のところ葵を縛り付けているのは合意書の存在だけではない。

葵はあの日理事長室で、晃介を信じてみるか?という言葉に頷くことができなかった。

白河病院のみならず医療業界に絶大な影響力を持つ白河大介に、たとえ息子だとしても晃介は勝てないと思ったのだ。

愛していると言いながら、彼を信じられなかった。

なにも言わずに姿を消した。

いくら脅されたからといって、その選択をしたのはほかでもない自分なのだ。

そのことをずっと申し訳なく思っている。

双子を愛おしく思えば思うほど、彼らの父親を奪ったのは自分なのだという罪悪感に苦しめられる日々だった。
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