ハッピークライシス
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屋敷を抜け、林道から森に出る。
地平線が薄っすらと白み始める頃になっても、鬱蒼と茂る木々に囲まれまるで夜の闇の中にあるようだ。
ユエはまだ、この周辺にいる。
木々に身を隠しながら、ゆっくりと周囲の様子を窺う。枝葉が揺れるザワメキの中、高ぶる自身を落ち着かせる為に息を吐いた、その時だった。
タ―――――ン、
乾いた空気を裂くような銃声が響き、シホのいる場所から僅かに離れた木の幹に銃痕が残る。心臓が、どくんと大きな音を立てた。
研ぎ澄ませた感覚、空気の僅かな振動さえも肌に感じる。
銃弾が放たれた方角を確認し、草木の中を身を低くしながら駆けた。
続けざまに、銃が撃たれ、一発は地面を弾き、もう一発はシホの頬に薄らと傷をつけた。
流れる血を拭い、思い切り声を上げた。