ハッピークライシス
シホは弾かれたようにユエとの間合いをとった。
一瞬前まで膝をついていた場所に、銃弾が撃ち込まれた。
こめかみから、汗が一筋流れ落ちる。
ほんの数秒でいい。ユエの気を逸らし、隙をつけなければこのままジワジワと体力だけが失われる。
乾いた銃声が響き渡り、コンマ数秒遅れてシホの体表に弾ける激痛をもたらした。崩れ落ちそうな身体をなんとか奮い立たせた。
やはり、ユエには敵わない。生きて捉えることは不可能だ。
―ならば。
覚悟するまでだ。頭を、心臓を、その銃弾で打ち抜かれても、刺し違えてみせる。
そもそも、ユエはその気になればいつだってシホを殺せるのだ。
彼が余裕を見せている今この瞬間だけが、最初で最後のチャンスだ。