ハッピークライシス
ユエは眉を寄せて、ゆっくりと銃を握りなおした。
次で、最後。シホは息を詰めて、身を低める。そして、一気に距離を縮め、ユエへと飛びかかった。
まるで、スローモーションのように感じた。暗闇の中で、その青い瞳にシホが映る。どうして、自分はそんなに泣きそうな顔をしているのだろう。
刹那、溢れだす感情に胸が痛い。
ユエは後ろへと飛び退き、トリガーに手を掛けた。銃口は、真っ直ぐにシホの心臓をさす。
―殺られる。
地面を蹴り上がり、両手で以てナイフを振りかざしてユエに刃を向けながらも、無防備にあいた胸元への衝撃を待つ。
けれど。
――――ッ!
訪れたのは、痛みではなく、銃身と刃が合わさる鈍い音。痺れる衝撃が掌を伝う。ユエはトリガーを引かなかった。ただ、ナイフを受け止める為だけに銃を使ったのだ。
銃で受けるユエの手には刃が食い込み、だらだらと血が滴りシャツの袖を真っ赤に染めていた。