ハッピークライシス
少女が、そっとユエに近づいて傍に座る。
ビリ、ビリ、と布が破かれる音がして、視線を少女に向ける。先程ユエがしたように、少女は自身のワンピースを引き千切り、ユエの額に浮かぶ汗をそっと拭った。
「…ユエは、嘘つきなの」
「あはは、いきなりなんだ。まあ、そうだな。必要な嘘ならいくらでもつくさ」
「それじゃあ。あのお姉さんは、ユエの大切な人?」
窓に凭れかかりながら、ただじっと少女を見つめる。
少女は静かにユエが答えるのを待っていた。咽喉が詰まりそうな、奇妙な感覚が生まれる。
「…なぜそう思う」
「だって、あの人だけは殺さなかった」
思わず、目を見開いた。
子供というのは厄介な生き物だな。ユエは思う。大人が複雑にしがちな感情をあまりにもシンプルに捉えるのだ。