ハッピークライシス
少女が、そっとユエの手元を覗きこんだ。
「シムカ、って、わたしのこと?」
「ああ。…そういえば、お前の名前、聞いてなかった」
「そんなものは、もう忘れてしまった」
少女は余程嬉しいのか、何度も何度も名前を口にする。そして、満面の笑みを浮かべてユエを見上げた。
その時の顔が、夢の中で見たシホと被って妙な心地だ。
「………じゃあ、一緒に来るか?シムカ」
ぱちぱちと、大きな瞳を瞬かせた後、少女はこくりと首を縦に振った。
「喜んで、パパ」
少女の返事に驚いて一瞬声を詰まらせた後、ユエは不機嫌そうに眉を寄せた。腰まで伸びた亜麻色の髪を、両手でぐしゃぐしゃとかきまわす。
「…俺は、まだ19で、お前みたいなでかい子供のパパじゃない」