ハッピークライシス
シムカが声を上げて笑う。
いつレヴェンに命を奪われかねないこの状況で、子供というのは本当に呑気で羨ましい。
ユエは肩を竦めながら、先程見た短い夢のことを想う。
「思い切り振られたな」
「…なんのこと?」
「子供には関係ない」
シムカは頬を膨らませ、拗ねたような表情でプイとユエから顔を背ける。そして、ぱたぱたと木枠の窓へと歩いて行った。
ユエもその隣に立つ。
闇色を映すイタリアの海。灯る灯り。そして夜空に瞬く幾千の星。木枠の中で、まるでひとつの絵画のようだと思った。
夜明け前にここを立つ。
地平を黄金の光が染める絵をこの場所で見られないのは残念だが、今は。