ハッピークライシス


「僕の名前を覚えていてくださったんですね。嬉しいなあ」

「も、…勿論です。ジェイド様とロゼ様はとても美しかったので、誰の目にも留まりますわ。おふたりは恋人同士、でしたっけ」


ひくりと口元が歪むも、ロゼという人物を演じ、肯定を示す為に目を細める。
自分は、このためだけに呼ばれたのだ。


「…僕は、美しいものが好きなんです。そこに、性別なんていう些細なものを挟まないだけで」

「まあ、そうでしたの。そういえば、会場では女性とも随分親しげな様子でしたものね。そうだ!折角いらしてくださったんですもの。ロゼ様がお好きな"美しいもの"少しご覧になっていきませんか?」


ぽん、と手を叩いてユエの腕をとる。


「折角ですが、マダム、」

「リサ」

「…は?」

「リサとお呼びください。"マダム"と呼ばれるのは嫌い。私、まだ23なのに」


< 26 / 145 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop