ハッピークライシス
「僕の名前を覚えていてくださったんですね。嬉しいなあ」
「も、…勿論です。ジェイド様とロゼ様はとても美しかったので、誰の目にも留まりますわ。おふたりは恋人同士、でしたっけ」
ひくりと口元が歪むも、ロゼという人物を演じ、肯定を示す為に目を細める。
自分は、このためだけに呼ばれたのだ。
「…僕は、美しいものが好きなんです。そこに、性別なんていう些細なものを挟まないだけで」
「まあ、そうでしたの。そういえば、会場では女性とも随分親しげな様子でしたものね。そうだ!折角いらしてくださったんですもの。ロゼ様がお好きな"美しいもの"少しご覧になっていきませんか?」
ぽん、と手を叩いてユエの腕をとる。
「折角ですが、マダム、」
「リサ」
「…は?」
「リサとお呼びください。"マダム"と呼ばれるのは嫌い。私、まだ23なのに」