ハッピークライシス
リサは、結局ウィスキーボトルを殆どひとりで空け、ふらふらとした足取りでテンペランス=ジュールの絵画に手を掛けた。
酔っ払った勢いで絵を傷つけやしないか不安に思いつつ、彼女の動きを追う。震える手でゆっくりとそれを壁から外し、さらにフェイクとして張られた壁紙を丁寧に剥がした。そこにあったのは9桁のナンバー式のボタンだった。
リサが慣れた手つきで番号を押すのを盗み見て、念の為、記憶に刻む。
ガチャ、と錠が外れる音がした。それを確認したリサが、壁紙と絵画を元の状態に戻してユエを手招きした。まさか、名画の下にあんな仕掛けがされているなんて誰が考えるだろう。
寝室の広々としたクローゼットの最奥、重苦しい頑丈な扉を押し開けると、そこには地下へと降りるための階段が現れた。