ハッピークライシス




―この女が男を部屋に誘うのは、初めてじゃないはずだ。
夫の誕生パーティでさえ、こうやって声を掛けてくるくらいだ。日常的に火遊びはしているのだろうが…。

これまで、彼女から情報が漏れなかったのはただの幸運か?フィリップ=フェデリコがジュールの絵画の所有者だということでさえ、知られていなかったというのに。


リサの小柄な身体が、革張りのソファの上で激しく乱れる。跳ねるような呼吸と、甲高い声で叫ぶのが滑稽で、思わず笑みを浮かべていた。


「ロゼ様、ロゼ様…、…っ、もっと、もっと、もっともっと…!」


息も絶え絶えに、リサはうわごとのように、そう繰り返し声を荒げる。
ユエの深い青の瞳に映るリサの姿を、彼女は朦朧とした意識の中でじっと見つめた。
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