ハッピークライシス
「口封じに、僕を殺す気ですか?」
茶化すように笑って言えば、リサは神妙な顔をして何も答えない。
―もし、本当にその気なら、返り討ちにするまでだ。
静かに口角を上げ、彼女の動きを待つ。
リサは、宝物庫の奥に姿を消した。遠くで、カチャ、と錠の外れる音が響き、コツコツとふたりぶんの足音がこちらへ近づいてきた。
距離は、およそ7メートル程先か。
ひとつひとつの事柄を観察しつつ、視線を先にやる。
屈強な殺し屋でも連れてきたかと思いきや、そこにいたのはリサと、まだ10に満たない少女だった。想定外のことに、思わず目を見開く。
「…お待たせしました」
「ああ、…はい。て、その子は?もしかして、あなたの子供?」
「まさか。フェデリコの秘密。祝福を与えるモノです」
「へえ」