ハッピークライシス
「何が原因かは、正直分からない」
「記憶が抜け落ちている?」
「…ああ、そうだ。退屈なパーティだった。一足先にホールを出たところまでは覚えているんだがな」
シンシアは何か考えるように眉を潜め、短くなった煙草を灰皿に押し付けた。
「忘れたことは何だ」
「なんのトンチだ。忘れたものは忘れて…」
そこまで言いかけたユエの脳裏にひとりの女が思い浮かんだ。
目覚めてすぐのことだった。テレビにフィリップ=フェデリコが出ていて、その後ろに彼女は立っていた。
"あんたマジで大丈夫?リサ=フェデリコ。フィリップ=フェデリコの奥さんでしょ"
(俺は、知っているはずの彼女を知らなかった)