ハッピークライシス
「やあ、セオ。待っていたぞ」
「ご無沙汰しております、フェデリコ殿」
「…年明けのパーティ以来か。よくやっているようだな。私の耳にも評判が入ってきている。まさか、そんなお前から取引を持ちかけられるとは思いもしなかった」
「私は、ご存知の通りスラム出身でしてね。勿論、その筋で信頼出来る知人もおります。先日、イァノ美術館から青薔薇に強奪された"メテオラの乙女"が闇マーケットに流されたという情報もそこから」
セオは、ニコニコと笑みを浮かべながら絵に掛けられた薄い布にそっと手を掛け、ゆっくりと取り払う。瞬間、その美しさに目を見張り、ほぅ、とフィリップの溜息が零れた。
「素晴らしい。こんなにも早く、この絵を見ることが出来るとは思わなかった。400万ドルではとても手に入れられない品だ…。本物かね?」
「ええ、ここに鑑定書もございます。今、当事務所ではどうしても資金が必要なのです。本当であれば、この絵はずっと手元に置いておきたいと思っていましたが、さすがに趣味と政治活動とを天秤に掛ければ、この取引をせざるを得ません」
「良い選択だ、セオ=カルタ」