ハッピークライシス



フィリップは、皺が深く刻まれた頬を一層歪めて笑みを浮かべる。

嘗め回すようにメテオラを鑑賞しているのを見つつ、そっと室内を窺う。誰かが潜むような気配はない。

フィリップが不審な動きをすれば、いくら戦闘術が苦手な自分だとして、この老人と妻を昏倒させるのはわけない。
ロマッリオは、どういう状況で取引に応じたのだろうか。それがもし、この状況と同様のものであれば、戦闘のプロフェッショナルである彼が、銃を持たずとしても命を失うはずはないのに。



「応じて頂けますか?」

「勿論だとも。是非、私のコレクションに加えたい。そこでだ、400万ドルという安値で彼女を譲ってくれるという君に私からもひとつ贈り物を渡そうと思う」

「…贈り物?」



セオは、小さく眉を寄せる。
ローテーブルに置いてあった銀色のベルを鳴らすと、ゆっくりと背後の扉があいた。

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