ハッピークライシス


―何が起こっている、セオ。


ゆっくりと少女が離れる。


「…素晴らしい"取引"をありがとう、セオ=カルタ」


フィリップ=フェデリコが静かに笑みを浮かべ、そう言った。
セオは何も答えない。

ただ静かに立ち上がり、そしてフェデリコ夫妻と握手を交わした。画面に、少女が映し出されることは無かった。来た時と同じようにエレベーターホールまでリサに見送られる。

まるで単純な流れ作業を見ているかのように、なんの淀みもない。


「失礼します、マダム」


チン、とエレベーターのベルがなり、最後にリサが美しい微笑みを浮かべるのが見えた。




カツ、カツ、静まり返る駐車場に足音が響く。
シンシアはノートパソコンを閉じ、待ちきれず車外へと飛び出した。

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