ハッピークライシス
警察は、青薔薇の逮捕に躍起になっているし、マスコミはその人物について想像しては特集を次々と組んでいる。
資産家の女性、政治家、マフィア、…様々な憶測が立てられはしているが、どれも的外れで、ユエに繋がる情報にはならない。
抜け目ない男だから、色々な策を講じて自分の存在を表に出さないようにしているのだろう。
今回の『メテオラの乙女』についてもそうだ。
美しい名画を狙っていたのは、ユエだけではなかった。同業の盗賊団一味も彼女を攫うことを目論んでいたらしい。
「ユエ、あまり敵を作ると後々面倒なことになると思う」
「何だ。心配してくれてるのか?」
殺し屋業を営むシホにとって、ユエは同郷の幼馴染であり、良い客だ。
もともと金自体にに興味がないこともあって、金額を出し惜しむことはないし、何より裏をかかれる心配がないのはありがたかった。
深い闇の世界では、自分もユエもまだまだ若手だ。薄汚い駆け引き、足の引っ張り合い、いつ濃い黒に騙され飲み込まれるかもわからない。
だからこそ、仕事を行う上で面倒事は少ないほうがいいに決まっている。