ハッピークライシス
引き出しから拳銃を取り出し、メンテナンスを施す。
ホルスターに収め終えるタイミングを計っていたように、玄関のドアベルが鳴った。
慌ててパソコンの電源を落とす。
シーツの中から這い出て、急いでシャツとホッとパンツを身につけながらドアスコープを覗けば、そこには白いシャツにジーンズというラフな出で立ちのユエが立っていた。
動揺が表情から消えているのを鏡で確認し、ゆっくりと扉を押す。
「やあ」
「…何よ、連絡もしないでいきなり尋ねてくるなんて」
必死に冷静を装ってみるものの、どこか声に固さが残ってしまった。
けれど、ユエはそんなことなどちっともお構いなしに部屋に上がりこんでくる。
「相変わらず、殺風景な部屋だな」
「あんたのゴミ溜めみたいな部屋よりマシでしょう」
「酷い言い様だな。片付けは苦手なんだ」
困ったように言い、ソファに腰掛ける。