ハッピークライシス
「シホは、最近大変そうだな。目の下に凄いクマ」
ユエが何気なくそんな話題を突然振るものだから、心臓がドキリと鳴った。
レヴェンから依頼を受けていることを知っていて、そしてユエはそれを邪魔しようとしている癖によくそんなことが言えたものだ。
―酷い。
シホは心の内で、ユエを罵る。
「…おかげさまでね」
「良ければこの後、少し時間空いてないか?」
「え…?」
「明後日、イタリアを経とうと思っている。また暫らくは会えないだろうから、どこか一緒に出かけられたらと思って」
そう言って、ユエはニコリと微笑んだ。