ハッピークライシス
■
「ジェラート2つ、メローネとピスタチオ」
「は、はい!かしこまりました!!」
にこにこと上機嫌のユエは、特上の笑みを浮かべながら色とりどりのジェラートが並ぶショーウィンドウを指差した。
若い女性の店員は、美しい彼を見て一瞬で顔を真っ赤にさせた。コーンを持つ手が、緊張で小刻みに震えているのが分かる。
―…まあ、確かに。顔がいいのは認めるけど。
「グラッツィエ」
「…!」
可哀想に、このままだと失神でもしてしまいそうな様子だ。
溜息をついて、ユエの腕を引っ張り店の外へと連れ出した。その瞬間、店内で黄色い悲鳴が上がるのに、ユエは不思議そうな顔で後ろを振り返った。