この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜



 兄さまはさき子さまに会釈をして通り過ぎる。
 井深さま達も黙礼して、私達の前を通り過ぎた。

 さき子さまのところへ戻ると、さき子さまは兄さま達を眺めながら、ほぅとため息をつく。



 「同じ日新館の同輩なのに、どうしてこうも違うものかしらねえ……。
 皆 落ち着いていて、大人びて見えるわ。

 それに比べてあの子ったら……。

 そういえば八十治さんは、今年止善堂に進まれたのよね?
 あの子は武芸ばかりに身を入れて。いつ素読所を終えられるかしら……」



 そう漏らすさき子さまに、私の口から笑みが落ちた。

 きっとさき子さまにとって利勝さまは、いつまで経っても、手のかかる弟なのでしょうね。

 でもね、さき子さま?

 私にとっては、利勝さまが 一番輝いて見えるんです。

 利勝さまが、日に日に凛々しく成長されてゆくのがわかるんです。

 きっとこれから、弟君はどんどん素敵な若者になりますよ。


 きっと………。


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