この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
兄さま達も談笑されてるのか、わっと楽しそうな声が、兄さまのお部屋のほうから沸き立つのが聞こえる。
「盛り上がってるわねえ」
さき子さまと私は、顔を見合わせ苦笑した。
どんなお話をされてるのかしら?
いいなあ……私もまざりたい。
「そういえばね、近々兄上も上洛することが決まったの」
さき子さまは、ぽつんとそう漏らした。
兄さまのお部屋に意識が飛んでいた私は、驚いてさき子さまに視線を戻す。
ふわりと風が入り、風鈴がまたチリリと鳴った。
「雄介さまが……?」
「ええ……。このご時勢でしょう?またいつ何時 戦が起こってもおかしくないもの。
兄上は軍事奉行で大砲隊頭の、林 権助さまの配下につくのですって。
林さまは我が藩屈指の砲術家、山本 覚馬さまの近代兵器への兵制改革論に、いち早く賛同されたお方なのだそうよ」
「そうですか……」
「父上に続き、兄上まで上洛するとなると、うちの男手は雄治だけになってしまうわね」
普段気の強いさき子さまのお顔にも、表情に少し影が落ちる。
私は俯いてしまう。
戦はいや。
人の命が、簡単に失われてしまうから。
今まで培ってきたものが、すべて奪われてしまうから。
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