この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜



 「おい、よせって!」



 突然そんな声が飛んできて 思わず振り向くと、

 ドタドタとけたたましい音と共に、利勝さまと悌次郎さまがお互い掴みかかった状態で、縁側から庭へと転がり出てきた。


 それには私とさき子さまも驚く。


 庭に出たおふたりはどちらも諸肌を脱がれると、



 「ようし、見てろよ!」

 「そっちこそ!」



 そうおっしゃって、お互いの袴の紐を掴んで組み合った。



 これって……相撲(すもう)



 兄さま達も庭に下りてきて、歓声をあげて応援する。



 「そこだ!行け!雄治!」

 「負けるなぁ!悌次郎!」



 おふたりはどちらも引かず、なかなか勝負がつかない。


 利勝さまのほうが、少しお身体が小さく見える。


 おふたりが組み合うのを見つめながら、私はいつのまにか、胸元できつく拳を握りしめていた。



 (……利勝さま!負けないで!)



 組み合ったままで、なかなか動かなかった悌次郎さまが勝負を決めようと、



 「おりゃあ!」



 かけ声とともに、投げ飛ばそうとした直後。



 踏ん張った利勝さまと勢いあまって、おふたりとも、もんどりをうって倒れた。



 上に乗ってたのは―――利勝さまのほうだった。


< 199 / 466 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop