この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
「おい、よせって!」
突然そんな声が飛んできて 思わず振り向くと、
ドタドタとけたたましい音と共に、利勝さまと悌次郎さまがお互い掴みかかった状態で、縁側から庭へと転がり出てきた。
それには私とさき子さまも驚く。
庭に出たおふたりはどちらも諸肌を脱がれると、
「ようし、見てろよ!」
「そっちこそ!」
そうおっしゃって、お互いの袴の紐を掴んで組み合った。
これって……相撲?
兄さま達も庭に下りてきて、歓声をあげて応援する。
「そこだ!行け!雄治!」
「負けるなぁ!悌次郎!」
おふたりはどちらも引かず、なかなか勝負がつかない。
利勝さまのほうが、少しお身体が小さく見える。
おふたりが組み合うのを見つめながら、私はいつのまにか、胸元できつく拳を握りしめていた。
(……利勝さま!負けないで!)
組み合ったままで、なかなか動かなかった悌次郎さまが勝負を決めようと、
「おりゃあ!」
かけ声とともに、投げ飛ばそうとした直後。
踏ん張った利勝さまと勢いあまって、おふたりとも、もんどりをうって倒れた。
上に乗ってたのは―――利勝さまのほうだった。
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