この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
「あの……利勝さま……」
おふたりを慰められる自信がなくて、屋敷の中に上がるのをためらう私に、利勝さまは淋しく笑う。
「……その名を呼ぶのも、もう お前だけになってしまったな……」
どこか自嘲めいた笑いだった。
「別に気負わなくていい。お前の顔を見せるだけでいいんだ」
見上げるそのお顔がせつなくて、また胸が締めつけられる。
「……私が、呼びます」
自然と、口からこぼれた言葉。
「何があっても、私が。私がその名を呼び続けますから」
“利勝さま”と。
――――ふと、幼い日に兄さまとまつが交わした約束を思い出した。
あの時のまつも、こんな気持ちだったのかな……。
私も 誓おう。
いつか 利勝さまと、離れてしまう その日まで。
その名を呼び続けると、自分に誓おう。
利勝さまは目を見開いて、驚いたように私を見つめていたけれど、
「……早く。母上のところに行ってやってくれ」
そう お顔をそらされただけだった。
私はお辞儀をして、中へと上がらせてもらう。
ちらりと後ろを振り返ると、庭へと視線を向けたままの利勝さまの背中が映った。
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