この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
 


「あ」



声をあげて、兄さまは空を見上げる。

つられて私も空を見上げた。



空からは ちらりちらりと、雪が舞い落ちる。


雲の切れ間からは青空が見え、光りが帯状に差し込む。



ふわりと舞う綿毛のような雪に光が反射して、キラキラと光るその光景に私は目を奪われた。



「……風花?」



思わずつぶやくと、振り返った兄さまがやさしく笑う。



名残り雪かもしれない。






――――もうすぐ 春が来る。



桃の花 桜の花が開き、心 踊らせる季節が。



けれども今年の兄さま達は、別のことで心を踊らせることになる。






そして。



私達は まだ知らないのだ。



雄介さまの 死が

鳥羽・伏見の戦いで散った たくさんの命が

まだほんの 序章に過ぎなかったことを。





これから起こる 惨劇を

会津藩のたどる末路を。



誰が 想像できただろうか。






――――暗雲は、すぐそこまで 迫ってきていた。





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