この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜



 初陣から戻ってこられた兄さまは、初めての経験ばかりで興奮されておられるのか、
 夕飯の時でさえ、初陣のさなかに見聞きしたことを、私と母さまに語って聞かせてくださいました。



 「ですから継母上!本当にすごいお方なのですよ、土方さまは!
 ああ、父上が居られたらなぁ!土方さまのお話を聞いていただけたのに!」



 兄さまは頬を紅潮させながらおっしゃる。



 「そうですね」



 私は苦笑い。

 たしかにお父上さまが居られたら、存分に熱弁をふるえたでしょうに。


 お伺いした話によると、白虎隊の宿舎のとなりに土方さまの宿舎があって、第一線で闘ってこられた土方さまのお話を連夜拝聴できたとか。


 兄さまや利勝さま、ほかの隊士の皆さまにとっては、かけがえのない時間となったことでしょう。


 泊まりがけの外出や、実戦経験者のお話。


 なにもかもが初めての経験だった兄さまは、まるで物見遊山から帰ってきたような面持ちで、瞳を輝かせて語り続ける。


 母さまはにこにこ笑って聞いておられるけど、不安で連日眠れぬ夜を過ごしていた私は、なんだか拍子抜けしてしまった。


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